アニメ業界で学んだこと、その1。人生設計と会社のキャリアプランが合わないとダメだよね

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アニメ業界にいた頃、ずっと思っていたことがあります。

なんで何年も働いてた人が辞めていくんだ、と。
 
今の派遣先も離職率が問題になってて、アニメ業界とよく似た構図だなと思ったのでちょっと書いてみます。
 
アニメ業界時代、僕は制作側だったので固定で給料はもらってました。
でもその給料が上がる見込みはほぼなかったです。
もちろんボーナスなんかも無い。
 
でも制作は一応生活できる給料なのでまだマシ。
アニメーターは歩合給なので、新人の頃は本当に稼げないので親からの援助をもらったり、貯金を崩したりして生活してましたね。
 
そんな業界なので辞めていく人は何人もいました。
 
もちろんアニメーターは食っていくことができないからって理由。
作監をやるような人でもバンバン辞めていく。
制作も辞めまくり。
 
辞める人には大体2つのパターンがありました。

その1。アニメ業界自体が合わずにすぐに辞めていくパターン

アニメ業界に入ってはみたけど、給料も安いし長時間労働だし、ついていけませんとすぐに辞めるパターンですね。
ちょっと興味があったから応募してみましたみたいな人や、専門学校を出てある程度勉強はしたし、業界についての知識もあって覚悟もしてたけど、想像以上だったのでついていけませんでした、みたいな人達。
こういう人達は実際精神的にも甘い部分が多い人達でした。
入ったばっかりで何もできないのに権利ばっかり主張したりみたいな。
その割に自分で勉強したりとかもなく、仕事は先輩が教えてくれて当然みたいな意識。
もちろん全員がそんな意識な訳ではもちろん無いし、アニメ業界の問題を正当化する意図も無いですが、すぐに辞めていく人達には単にこのような傾向が多かったということです。

その2。業界を見限って辞めていくパターン

この2つ目のパターンが業界的に大きな問題なんです。
 
制作であれば、数年働いて作品の回し方も分かってきて中堅的なポジションにいるような人達です。
アニメーターさんや他社との信頼も築けるような、業界的には仕事がデキるとみなされる人が多いですね。
久しぶりにその人のいる会社に電話したら、先月辞めましたみたいなことがよくありました。
あの人仕事できたのに、もったいないとはよく思ったもんです。
 
アニメーターも原画をバリバリ描いてたり、作監も出来たりするようなある程度実力のある人が辞めます。
天才肌というよりは秀才タイプが多いかも。
 
この2つ目のパターンで辞めていく人の共通点は、頭も良く仕事もデキるということです。
 
よくネットで言われているアニメ業界には中堅がいないというのはこういうことです。
 
で、何で辞めていくかというと、将来の人生設計が描けないからということに他ならないです。
自分も30ぐらいになって、将来のこととかを考えた時に、やっぱこの業界はキツいなと思ったもんww
 
制作の給料って良くて20万ぐらいです。社会保険とか入ってる会社は(非常に少ないですがw)、額面はもう少しあるかもしれませんがそれでも最大30万ぐらいじゃないですかね。
デスクとかプロデューサーとかになるともっともらえるところもあるでしょうけど。
 
アニメーターも今の原画単価が1カット4000円ぐらいで、月に50カット描いてようやく20万という世界です。
作監だと1本30万前後ですが、例えば2ヶ月間その作品に拘束されるとすると月15万です。
今は作監複数体制が当たり前になってるので、1ヶ月で2人体制とかということの方が多いですが。実際は3週間で3人とか、4人とかもっといたりしますがww
 
要は数年で給料は頭打ちになるってことです。
特にアニメーターはキャリア10年が、20年になったからって、2倍の量を描けるようになる訳ではないですからね。
 
アニメ業界で働くことが好きで仕事に生きるみたいな人は業界に残りますが、そうじゃない人はある程度若さがあってつぶしが利く間に業界を辞めるということです。
 
40歳になった時に、30歳の頃に毛が生えたような金額の給料で、責任だけ大きくなって労働時間も毎日最低12時間働いて週休1日取れるか取れないかじゃ、普通辞めるでしょう。しかもその体制が変わりそうな気配もあまりない。
 
アニメ業界で働いているのは、常に1部の天才と若手しかいないと言われる所以です。
 
前に読んだ漫画のセリフに「産業とはたくさんの普通の人間を食べさせること」というのがあったけど、普通の人がどんどん離脱してるこの業界は、産業として成立してない訳です。
 
その中でも東映はスケジュール管理とか給料とか福利厚生とかしっかりしてましたね。トムスあたりもか。
でも少しの会社がちゃんとしてても焼け石に水なので、やっぱり業界全体で改善していく必要があると思うのですが。
…と、横道に逸れてしまいました。
 
僕はアニメの仕事は嫌いでは無かったですけれど、今は業界を辞めてしまってる訳です。
やっぱりそれには給料とかもだけど、将来がどうなるか分からないというのが一番大きかったです。
 
もちろんまだまだ改善の余地があるということでもあるし、将来が保証されている仕事なんか無いということも分かりますが、それでも将来楽になるビジョンが見えないというのは大きかったです。
 
いや、別に楽になりたい訳でもないですけど、スキルや経験が蓄積できて、それを利用して効率化が図れたりして給料が上がったり、もしくは休みが増えたりとかだったら良かったですが、そういう感じでも無かったし。
 
僕個人的には「今」ブラックなのは別にそれほど気にしないです。
僕もアニメ業界入ってすぐはある程度の苦労はしたし、その分その後の仕事は他人より出来るようになったと思ってます。
 
それよりも不安なのは「先」が無いことです。
頑張った結果が自分の望む将来に繋がるかどうかということです。
 
僕が最後にいたアニメ会社は将来性は非常にあったと思います。
みんな頑張ってたし、業績も上がって会社自体も大きくなってきてた。
でもそれが僕個人の人生を考えた時に合致するかという話で。
いろんなとこ旅行とかも行きたいし、趣味の時間ももっと欲しいし、東京でずっと住んでるのもそろそろという気もしてきてたしというところで、ずっと狭い業界しか知らないのはダメだなとは思ってたし。
伸びてきてて、攻めてる会社に意識が違う人間がいるのはあんまり良くないし。
それで一旦は会社を辞めるということになった訳です。
 
アニメやその業界が嫌いになった訳では無いし、また戻るかもしれないですけどね。
 
ちなみに上で書いたセリフのある漫画は↓です。
この漫画みたいに、オタク産業で町興しとか全然できると思うんだけどなー。
過疎地にアニメーター移住させるとか。
徳島県とか良いんじゃないかな。IT企業誘致とかしてるし。
アニメでもマチ★アソビとかのイベントやってるし、親和性高いかも。

 

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