仕事で一番キツイのは「先」に希望が見い出せないこと

アニメ業界でのキャリアについてよくよく考えてみたところ、仕事で一番キツイのって「先」が合わないことなんじゃない?と思ったので、ちょいと膨らませて考えてみる。
 
ちなみにアニメ業界にいた頃は、労働時間が長かったりでのブラックというのはあまり気にしなかったです。
最初は何じゃこりゃと思ったけど、慣れれば対応できたし。
ていうか制作側からしたら実はアニメ業界ってそんなにブラックでもなかったりするし。
会社にいる時間の多くは待機時間だったりで、コマ切れだけど自由時間は結構あるんだよね。
マンガも読めるしネットもできるし、服装自由だし。会社によりけりかも知れないけど。
 
今の派遣先の会社は、アニメ会社よりは所謂「普通」の会社に近いと言っていいところ。
サービス業。
比較的若い会社だからか、組織がまだはっきりと固定してない感がある。
で、離職率が問題になってる。
 
僕が思うに会社を辞める理由ってのは、やっぱキツさってのもあると思うけど「先」の無さっていうのが一番大きいんじゃないかな。
 
どんだけキツくても、この期間頑張れば報われるみたいなのがあれば、頑張れると思うんです。
もちろん耐えられるキツさには個人差があるし、人体の限界に挑戦みたいなのはさすがにダメですが。
すき家のワンオペとかは明らかに限界を超えてるからダメな方の部類だけど。
 
「今」頑張ったら、一ヶ月後からはちゃんとシフトを組んで楽な勤務になるとか、数年後にはマネージャーになって給料が上がるとかあれば、ある程度は頑張れるでしょう。
ブラックがブラックなのは、こういった目の前の餌とかじゃなくて人生レベルで見たときに何も残らないからなんじゃないですかね。
 
例えば10年頑張ったら、給料が上がって休みも増えるようなキャリアが用意されてるかどうかということ。
 
アニメ業界ではそういうキャリアはなかったから、中堅がいなくなるという空洞化が起きてたんですが。
 
すき家とかワタミとかだけじゃなくてサービス業全般、そういう問題を孕んでるんじゃないですかね。
 
今の時代、IT技術が発達し管理職が1人でできる仕事の量が増えています。
 
ネットを使った勤怠・業務管理。監視カメラ等からの情報でオペレーション上の無駄や問題の洗い出しもできて、対応策もすぐに作ることができます。
こういうのは少数の本部スタッフでも対応できます。
 
以前(20年前とか30年前?)は組織が綺麗なピラミッド型だったのが、現代では少数のヘッドに多数の兵隊という形に変わってきているということです。
ピラミッドの中間層がIT技術で代用できるようになって、必要なくなってきたってことですね。
これは大多数の兵隊が次に目指すべきキャリアが無くなったということです。
 
だから会社の方もキャリアプランを提示することができず、「今」これだけ頑張ったら「先」はこれだけ良くなるということを示せない訳です。
 
前にも書いたような気がするけど、そんな先の見えない中での長時間労働ってやっぱり賽の河原で石を積むのと変わらない気がする。
給料もらって食べることはできるから、ご飯が出てくる賽の河原。
賽の河原の鬼が割烹着着て釜で味噌汁とか作ってるの想像したらちょっと笑えるかも。
 
ちなみに多くのチェーン展開してるようなサービス業では、店長→エリアマネージャーみたいなキャリアがあると思いますが、多くは店長は通常のオペレーションもやらなければならないし(居酒屋とかユニクロとかコンビニとかそうだよね)、ヒラのスタッフより忙しそうにしてることなんてザラのように見えます。そんななのに店長になりたいと思う人なんかいないでしょ。
エリアマネージャーぐらいまで行けばマシなのかも知れないけれど、それって何十人何百人の中の1人な訳で、みんなが目指すべきキャリアにはならないでしょ。
チェーン展開の仕組みが、分厚いマニュアルとか、中間管理層を極力排除して業務が出来るようにって作られてるんだから、仕組み上「先」は無くなってるってこと。
僕が今いる会社も同じ問題を抱えてて、中間層の離職が発生してるんだろうな。
 
って考えると、今の日本てチェーン展開してるお店が多いので、国自体がブラック化してるってことだよね。
そのせいで「先」が見えなくなってるのが今社会が感じてる閉塞感の原因なのかも。
 
将来結婚したい、子供が持ちたい、家を買いたい、車を買いたい、旅行に行きたいとかの希望が全部叶いそうにない会社なんか絶対続けないでしょ。
逆にそれが努力次第で叶う見込みがあれば、「今」多少キツくてもそうそう辞めはしないでしょう。
 
ということで人が仕事を辞める理由は、仕事内容でもそのキツさでもなく、見えてる「先」に希望が見い出せないってことなんじゃないかという話でした。