アニメ業界改善案。アニメーターの給与は何故低いのか?そして何故すぐに辞めてしまうのか?

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こんにちは。

さて、今回は前回のエントリの続きです。
 

cultivationjapan.hatenablog.com

 
前回、Janicaの報告を元に僕の肌感覚でのアニメ業界の実態について書きました。
 
そこで今回は、僕なりに考えたアニメ業界の改善案について書いていきます。
 

アニメーターの収入の低さの一因は新人が足を引っ張ってるから

 
労働環境の悪さには定評のあるアニメ業界。
 
新人だけでなくある程度稼げるようになった中堅も辞めていくことで、ヤバイ業界なんだという噂を裏付けています。
 
確かにそれは事実です。
 
でもそこにある問題は分けて考えなければいけません。
 
すなわち、新人が辞める理由と、中堅が辞める理由は別のものだということです。
 
これまで多くの人がそれを「アニメ業界の環境の悪さ」という本来別々の問題を、1つの問題として捉えていたから、ややこしくなり本質を見誤っているように思います。
 
中堅が辞める理由は前回にも書いた通りです。
 
要約すると、将来に対して明るいビジョンを描くことができないから、ということです。
 
これも大きな問題で、解決すべきものです。
 
でも新人が辞めていくのはまた別の理由です。
 

新人が辞める理由

 
まず筆頭に上げられるのが、食べていけない、思っていた以上に大変ということです。
 
思っていた以上に収入が少ないし、その期間が長い。
毎日の作業時間も長く体がつらい。体調を崩しがちになってしまった。
 
こんなところです。
 
動画から原画に上がっても、原画が思うように描けない、自分には才能がないのかもしれない、このままやっていく自信が無い等と思い悩み辞めていく人もいます。動画の段階でも同じですが。
 
これだけ見ると確かにアニメ業界は給料も安いし大変なんだなと思うかも知れません。
 
でもこれってよく考えると、新人の実力不足でもある訳です。
 
確かにアニメ業界は決して良い環境とは言えませんが、それでもそこで働いて生活している人はいる訳です。
 
ここでの問題は新人採用の入り口でのスクリーニングができていないということです。
 

新人の教育コストもアニメ業界が負担している

 
新人を教育するのは当たり前のことです。
でもそこには程度の問題があります。
 
知識も技術もゼロの状態から教えるのと、ある程度最低限とされる知識技術を持ってる人に教えるのとでは雲泥の差があります。
 
他の業種を例にとると分かりやすいと思います。
 
例えば医者。
 
まず大学で医学部に入学する為には、難関の入試を突破する必要があります。
さらに無事入学できた後の授業も大変だと聞きます。
習ったことに対する試験も当然クリアする必要があります。
国家試験にも合格しなければなりませんし、医者になってからも日々新しい研究結果が発表されるので勉強は欠かすことができません。
 
医者だけでなく、他の多くの仕事も同じです。
 

アニメ業界には誰でも入れる

 
アニメの場合は、専門学校にはほぼ誰でも入ることができます。
学校でも大した授業を行う訳ではないです。
アニメ系の専門学校を卒業した人のほとんどが、専門学校で学んだことは業界に入れば1~2週間で学べると言います。
janicaの報告でも、技術の習得方法の項で「現在の仕事に最も役に立っているもの」への回答が「制作会社に所属して」が軍を抜いていることからも明らかだと思います。
 
もしかしたら各学校は、しっかりとした講師を揃えて良い内容の授業をしているのかも知れません。
でも、その授業内容を生徒に身に付けさせる仕組みは無いです。
 
ちなみに国家試験なんかもありません。
当然明確な基準も無く、特別な資格も必要とされないので誰でも業界に入ることができます。
 
つまりアニメ業界に入ってくる新人に対しては、アニメについてゼロベースから教育しなければならないのです。
 
医者や他の仕事の場合の、資格試験やある程度の基準をクリアした人が来るようになってる仕組みが、アニメ業界には無いのです。
 
そしてその教育にかけるコストはアニメ業界が負担しているのです。
 
他の業界であれば、学校があって、生徒がお金を払って知識や技術を学ぶところを、アニメ業界は給料を払った上で知識や技術を教えてるんです。
 
バイトや会社で新人教育をやったことがある人なら分かると思いますが、新人の教育コストって結構かかります。
 
机とかの場所代、先輩アニメーターの指導にかける時間、そういう目に見えない莫大なコストがかかってる訳です。
 
それなのに、ほとんどの新人は半年とか1年で、食っていけない、やっぱり才能がなかった、自分には合わない等の理由で業界を辞めてしまいます。
辞めるまでにかけたコストは全て無駄になってしまいます。
 
そんなことが日常的に繰り返されてる訳です。
 

アニメ専門学校は何をしてるのか?

 
アニメ業界はアニメ系の専門学校に完全に舐められてる。
さらに言うなら、生徒のことも舐めてる。
 
専門学校と言いながら、現場で通用する技術も知識も教えないんだよ?
高い金を取りながら。
 
アニメ業界もそれで文句を言わないし、生徒も文句を言わない。
 
適当なアニメーター崩れに業界の話させて、簡単な絵を描かせてたらそれでOKみたいな。
 
ふざけてんのかって話ですよ。
 
動画マンの年収が110万で安すぎるってことですが、大半が知識も技術も無い人間なんだから、お金を貰えるだけ本来ならありがたがられこそすれ、文句を言われる筋合いなんかないはずです。
世の中にはお金の出ないインターンなんか腐るほどあるでしょ。
 
本来であれば、実際に業界に入る前に適正や能力をチェックする仕組みがあってしかるべきです。
医者になるための数々の試験や面接のような。
 
それが無いため、アニメ業界自身が学校や資格認定機関に代わり、自らスクリーニングをしている訳です。
だから、新人で辞める人が多くなってしまうという面があるんです。
 

アニメ業界全体の基準が低くなってる

 
また医者の話ですが、当然ですが国家試験受かって資格持ってる人しかいない訳です。
 
ところがアニメ業界は上記のように有象無象が入ってくる訳です。
 
だから、大した仕事ができない人でも、いくらでも下を見ることができるので危機感を抱くことがないんです。
あの使えない新人よりはマシという意識になってしまうんです。
 
これは単価で仕事をするアニメーターや仕上げより制作に多いかもしれないですね。
 
大した原画が描ける訳ではないけど、それすら描けない人間が多く、仕事が無くなる訳ではないから、技術を高める必然性が無い。
 
制作だと新人に車の運転や電話のやり取り、仕事の流れなんかをイチから教えるよりは、使えなくても既存のスタッフ(白箱のタローみたいな)に頼ってしまうということですね。そしてタローは下を見て安心し、自分の管理力を省みることなく、仕事ができないままになる、と。
 
悪循環ですわ。
 

解決案。業界入り口でスクリーニング

 
この悪循環を断つためには、アニメ業界に入る人を選別すれば良いんです。
 
必要な能力をリストアップして、
アニメーターだったら、どれぐらいのレベルの絵をどれぐらいの速度で描けなければいけないか、
仕上げも同様に、何分で一枚を塗らなければいけないか、検査しなければいけないか、
制作もExcelの習熟度、車の運転スキル、対人コミュニケーション能力、進捗管理
等、それぞれにランク付けして、車の運転2級とか、原画横歩き3級とか
基準を設けた上で、一定の基準以上の人しか入れないようにするとか。
 
とりあえず、誰でも入れるという現在の状況を改めるべきです。
 
その方法はいくらかあるかと思います。
 
ただ、少なくともモラトリアム感覚でアニメ専門学校に入って大したことを学べず、アニメ業界に入って食っていけないから辞めるっていう、本人にとってもアニメ業界にとっても無駄でしかないことは一刻も早く改善すべきだと思います。
 
それだけでも実行できればアニメ業界は大分マシになるんじゃないでしょうかね。