【アニメ業界改善案】設定の紙での配布は止めて、全部データにしちゃえばいいんじゃない?
アニメ業界には、外回りの他にもまだまだ無駄だと思えることがあります。
その1つが設定のコピーと配布です。
アニメを作る為には膨大な量の設定を必要とします。
キャラクターだけでも何十体もいて、それぞれのキャラの正面図、側面図、背面図の3種類に加え、表情集もあります。それらの設定を紙にすると、数十枚、百枚を超えることもあります。
その上に、小物設定、美術設定も加わると、数百枚になることも珍しくありません。
その大量の設定を、制作進行は各作業者に配布しなければなりません。
配布する為には、当然コピー(プリントアウト)という作業が発生します。
みなさんは、アニメのエンドテロップで「原画」にクレジットされている人数を数えたことはあるでしょうか?
最近のアニメでは10人だと少ない方で、多ければ20人30人、下手したらそれ以上の人数が参加していることもあります。
「第二原画」も含めたらさらに多くの人数です。
その全ての人に設定を渡す必要があるのです。
僕はこの設定の配布も、外回りと同じく大きな無駄だと考えています。
設定配布のコスト
仮に設定が一式で200枚、配布人数が50人だとすると、10000枚です。
コピーのコストは大体1枚1円です。
そうすると、テレビアニメ1話当たり、コピーだけで1万円のコストがかかってる計算になります。
1ラインだけの会社でも月に4本、4万円、年間にするとコピー代だけでおよそ50万円のコストです。
金額だけみると大したことはないかもしれませんが、お金以上に時間のコストがかかっているのです。
10000枚分の設定をプリントアウトする時間と、それをアニメーターに配布しにいく時間(社外アニメーターだったら外回りですね)、さらに誰にどの設定を配ったか整理する時間も必要です。
話数開始時点で全ての設定が揃っているということなんかなく、随時追加の設定が出てくるのが当たり前です。
だから、誰にどこまでの設定を渡したかのチェックをしっかりしておかないと、終盤になって必要な設定が無かったが為に作業が出来てなかったという事態が発生してしまいます。
この作業必要?
紙で設定を渡している理由
未だに紙で設定を渡している理由として、流出を防ぐ為というのもあります。
データで渡してしまうと、流出した際に出処が分からなくなるということです。
紙には全てシリアルナンバーを入れてあるので、誰に渡したか追跡が可能ということです。
しかし、実際は紙で渡したところでスキャンして簡単にデータ化はできるし、シリアルナンバーなんかデータ上でも、修正液等アナログでも消すことは可能です。
つまり、流出させようとする人間からしたら、設定が紙だろうがデータだろうが大して差はないということです。
それでも、データよりは紙の方がスキャンという手間が発生する分、多少の抑止にはなるという思い込みが製作・制作側の方であるんでしょう。昔からの流れというのもあるんでしょう。
さらにもう1つの理由として、紙の方が見やすいというアニメーターがいるというのもあります。
ある程度のベテランアニメーターだと、コンピューターにあまり詳しくなく、紙の方が良いという人もいます。
結果、基本的には紙で設定は配布し、希望がある人にはデータで渡すというようなスタイルになっています。
紙で設定を配布するのはデメリットしかない
まず、印刷コストがかかります。
金額だけでなく、時間的なコストもかなりのものです。
さらに、膨大な量の設定をコピーすることでコピー機への負担も大きいし、その管理も手間になります。
常にトナーをストックしておかなければなりません。
トナーが無くなったり、その他の不具合でコピー機が止まってしまえば、その間コピーやプリントアウトができなくなってしまいます。
設定以外にも、アニメーターが原画やラフ原をコピーしたり、コピー機の使用頻度は高いのです。
実は、アニメの業務のボトルネックはコピー機が担っていると言っても過言ではないほど、コピー機の役割は重要なのです。
で、常に膨大な量の設定をコピーしていると、不具合が起きる可能性は当然高まります。
というか印刷会社の業務用のものでも無い限り、オフィス用のものはアニメ会社が日常的に使っているような膨大な量の使用は想定されていないので当然です。
コピー機は複数台あるのが当たり前ですが、それでも1台が使用不能になることで、業務の速度はかなり落ちてしまいます。
そのリスクは非常に大きいです。
無駄な設定のコピーを無くす解決案
非常に簡単なことですが、全部データにしちゃえばいいんです。
そんでその設定をIDパスワードでアクセスできるサーバにアップすれば、必要な人が必要な分ダウンロードするので非常に効率的になります。
どの設定がいつアップされたとか、更新されたとかの情報も分かるようにしておけば、いちいち制作がアニメーターに連絡する手間が省けます。
こんなことを言うと、そんなの無理だという人が出てきます。
彼らの理由は大体以下の内容です。
・流出のリスクが高まる。
・パソコンが使えない人もいる。
・制作進行の仕事の放棄だ。
1つずつ考えていきます。
まず、流出のリスク。
これは上でも書いた通り、紙でもリスクは大して変わりません。
というかむしろ僕としては、設定なんか全部ウェブで公開してもいいんじゃないかと思ってます。
アニメの成果物はアニメであって、設定ではないです。
いくら設定を公開したところで、そのアニメの価値を毀損するものでは一切ないと僕は思いますがいかがですかね。
まあ、ネタバレになる部分ぐらいは、注意書きを付けたり、スクロールだけでは見えないようにした方がいいかと思いますが。
さらに言うなら成果物のアニメだって、見ようと思えばいくらでもネットで無料で見れる時代です。
むしろ隠す為に腐心するよりは、オープンにした上でいかに価値を付けていくかを考えた方が良いかと思います。
実際業務上でかかるコストと得られるメリットを秤にかけても、もうオープンにしちゃった方がいいんじゃないという気がします。
とはいえネット上にアップするのはやはりリスクはあるので、話数ごととか月ごとにパスワードを変更したりの対応はした方がいいかと思います。
次にパソコンが使えない人がいるということ。
現在のアニメは全てデジタルで作られてるんだから、制作に携わる人間は最低限設定を見れるぐらいの知識は勉強しておくべきです。
それでもどうしても無理という人は(紙の方が見やすいって人も)、スタジオに入って作業すればいいんです。
スタジオで自分で必要な分をコピーして作業すれば、無駄なコピーも発生しないし何も問題はありません。
最後の、制作の仕事の放棄というもの。
これまで自分がやってきた業務が無くなるとなれば、ベテランは新人に物申したくなる気持ちは分かります。
でも制作進行の仕事は、納期までに作品を完成させることです。
円滑な進行管理と素材の準備は副次的なものです。
サーバ上や、スタジオ内で誰でも(関係者がね)アクセスできるところに準備してれば、素材の準備はできている訳です。それで空いた時間を、管理業務に充てる方がよほど生産的です。
コピー機を故障させるリスクも、無駄な紙を配る手間も、無くせるなら無くすべきです。
もしこれが実現できたら、コストもですが、手間の削減が非常に大きいと思います。
そうすると制作進行の数をもっと減らすことができるかも知れません。
制作1人減らせたら、200~300万ぐらいの削減ですからね。
その浮いた金額をちゃんと成果を出している人に配分できれば、みんなが幸せに近づきます。
という訳で今回のまとめは、設定は全部データで渡した方が良いということです。