アニメ業界志望者がアニメ専門学校に行ってはいけない5つの理由

ラジオCD「SHIROBAKO ラジオBOX」Vol.2

高校生で進路を考える時に、アニメ業界に入りたいとか奇特なことを考える人もいるかと思います。
どうやってアニメ業界に入れば良いのか分からない為、とりあえずアニメ系の専門学校を志望する人は多いんじゃないでしょうか。
 
人生でわざわざ間違った選択をする人が少しでも減らせるように、声を大にして言っておきたいことがあります。
 
アニメ系専門学校には絶対に入ってはいけないということです。
 
例えば美容師志望なら美容専門学校に行くのは当然でしょう。技術も身につけられるし、美容師免許という資格もついてきます。国家試験は別に受けて合格する必要があるのかは知らないですけど、それでも試験対策はしっかりとやってくれると思います。
 
でも、アニメに関してはまったく違うんです。
 
下にアニメ系専門学校へ入らない方が良い理由を書いていきます。
 

1. つぶしがきかない 

アニメ業界がブラックというのは、もはやネットをやってれば周知の事実です。
そしてアニメ業界は、実際に労働環境とか給与体系で言うと完全に完膚なきまでに言い訳の仕様もないほどに真っ黒です。
最近もアニメ会社の給与明細がアップされて話題になっていましたね。
 
アニメ制作会社ジーベックの給与明細が流出! 衝撃の金額に驚きの声が挙がる・・・

yusaani.com

 

ブラック故、離職率も非常に高いです。
若い人は多分、「みんな大変とは言ってるけど能力のない人が大げさに表現してるだけで自分は大丈夫」とかっていう根拠のない自信を持ってる人もいると思います。
でも実際のアニメ業界は必ずその考えの右斜め上をいきます。
仮に食べていけるようになったとしても、現在のアニメ業界だと給料が上がったりということはほとんど考えられません。
30代40代になっても、300万円超えるか超えないかとかの年収で満足できると思いますか?
その為30歳前後で将来を考えて転職する人は多いです。
 
転職の際にアニメ系専門学校を出てるというのは、ほぼ何の役にも立ちません。
今は大半の人が大学を卒業している時代です。
大卒とアニメ専門学校卒、採用する側だったらどっちを選ぶでしょうか。
 
将来のことも考えるとアニメ系の専門学校は行くべきではないと思います。
 

2. 資格が手に入る訳ではない

 
上の内容とも若干被る部分がありますが、アニメ系専門学校を卒業したところで何の資格も手に入りません。
美容学校なら美容師の資格、看護学校なら看護師の資格が手に入りますが、アニメって何の資格もないんです。
そもそもアニメ業界に入るのに、必要な資格ってないですからね。
制作進行は車の免許はまだどこも必須でしょうけども(一部会社は外回りを外注してるので必要ないかも)。
強いていうなら仕上げさんが色彩検定持ってるといいかな、ぐらい。
実際、アニメーター検定1級ですとかないですし。
 
アニメ系専門学校とは、一通りのアニメの知識と、ソフトの使い方を多少教えてくれるだけの場所です。
もちろん設備はあるし、志を同じにする仲間もいるので、そこで切磋琢磨できればそれに越したことはありません。
 
しかし今の時代、ネットでいくらでも仲間と作ることはできるし、設備だってパソコンとソフトも安価になっています。
 
ちなみにアニメ系専門卒で、業界に入った人は大体、学校で学んだことは業界にいれば数日~数週間で分かることだったと口を揃えて言います。
 
つぶしもきかない、資格も得られない、スキルは他で学べる、そんな専門学校をあえて選びますか?
 

3. 実際にアニメ業界に就職できるかというとそんなことはない

 
デメリットがあるのは分かるけど、専門学校行く以外にアニメ業界に入る方法が分からないから仕方がないという意見もあるかも知れません。
学校によっては、就職率が100%を超えてると謳ってるところもありますしね。
この前国から怒られてましたけどwww
 
専門学校に行くとアニメ会社に確実に入れるのかというとそんなことは一切ありません。
 
100%超えの数字の実態は、同じ人が何社も受かってるからです。
例えば100人の生徒がいて、上位20人の優秀な人がそれぞれ5社受かってればそれだけで100%です。
上位50人がそれぞれ2社ずつでも同様ですね。
 
僕が採用窓口をやってた時(バイトや中途での採用でしたが)内定を出した人の多くは他社でも内定をもらっていて、最終的にうちではなく別の会社を選ぶということがありました。
 
逆にうちで断った人が、別の会社にも応募して断られるということもありました。
グループの会社だったので、たまたま情報が入ってそれを知ることができました。
 
つまり内定率100%超の実態は、一部の優秀(に見える)人に内定が集中してる結果で、入社できない人も大量にいるということです。
 
さらに言うなら、多くのアニメ系の専門学校では正直大したことを教えていないという認識なので、実は会社側からしたら専門学校を出たというのは一切アドバンテージにはなっていません。
むしろ普通の大卒だったり社会人経験者の方が、一般常識を持っているという点で評価が高かったりすらします。
一部会社では制作進行は大卒限定としているところもあります。
 
その際、やっぱり偏差値が高い大学の方が飲み込みも早いだろうということで、学歴フィルターがかかることもあります。
それよりは、ブラックなアニメ業界で、コミュニケーションや能力や体力等含めて総合的にやっていけるかどうかということの方を見ることが多いです。
 

4.専門学校行かなくてもアニメ業界に入ることはできる

 
何度も例に上げますが、美容師だったら美容専門学校に行くのがほぼ唯一のルートだと思います。
でもアニメはそんなことは一切ありません。
 
求人サイトを見れば、どこかしら常に求人はかけています。
自社HPを持っているところであれば、求人情報を載せていることもあります。
求人していなくとも、自分から電話なりメールを送るなりして、働きたい旨を伝えるというのもナシでは無いです。
マナー的には褒められたことではないかもしれませんが。
 
要はポートフォリオや履歴書で、能力や経験をしっかり伝えることができて、それが評価に値すれば、専門学校にこだわる必要はないということです。
 

5. 結局は自分次第

 
これを言うと身も蓋もないんですがww
アニメの技術って結局は自分で手を動かさないと身につかないものです。
画力にしろソフトの使い方にしろ、自分で何回も描いたり試行錯誤して知識や技術を高めていかなければいけません。
 
専門学校に行けば、課題は与えてくれるでしょうし、ソフトの使い方の授業もあるでしょう。
それらを一通りこなして卒業すれば、技術も知識も最低限は手に入るかもしれません。
でもそれはあくまでも最低限で、実務に当たれば数週間で身につく程度のものです。
 
それよりも大事なものは、自分自身で何が足りないかを見つけて、足りないものを得られるように努力できる能力です。
画力が足りないのであれば、どうやれば画力が身に付くのかを、考えて調べて実践できるということです。
演出でも彩色でも撮影でも制作でも全て同じです。
というかどんな仕事でも同じだと思いますが。
 
特にアニメに関しては、自分で能力を高めていかないと生き残ることができません。
どんどん下から、才能も能力も体力もある新人が入ってくるので、常に戦略的に自分をマネジメントしていかないとすぐに食いっぱぐれることになります。
 
そういった意味でも、全てお膳立てしてくれる専門学校では、「自分で考える」という能力は育成されないのではないかと思います。
 
これまでアニメ業界で制作に使用されていた、セルシス社のレタススタジオの販売は停止されてクリップスタジオに統合されました。
撮影に関しても、アドビ社のアフターエフェクトが主流でしたが、今後はどんどん変化していく流れになるでしょう。
 
となると、自分から新しいことを学ぶ意識を持って実行するという能力が、これまで以上に重要になってくると思います。 

まとめ

 
という訳でいかがでしょうか?
これらがアニメ専門学校に行くべきではない理由です。
 
アニメ専門学校にかける時間とお金があるなら、大学に行った方が良いと思います。
大学生は高校よりも時間に余裕があるので、在学中に絵の練習をしたり、アニメ制作を学んだ方が良いと思います。
環境がないと勉強ができないという人は、業界に入ってもやっていくことができず、結局すぐに辞めてしまうことになるでしょう。
 
ただこれはあくまでも僕個人の意見です。
最後に進路を決めるのは本人自身です。
 
今回の記事は少しでもその判断の一助になればと思います。
 

 

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