テレビアニメの作画予算、安過ぎじゃない?

ちょっとタイトルで煽ってみましたw
 
ここ最近、アニメ業界の問題がいろいろと取り上げられてます。
 
 
業界のおかしな点が取り上げられて、問題が是正される流れになっていくのは大賛成です。
 
ただ、今の流れで1つ危惧することがあります。
個別の問題だけを取り上げてその点だけを改善したとしても、ツギハギ的な問題解決だと別のところに負担がかかって全体的な問題解決にならないんでは無いかという心配です。
 
動画の単価が安すぎるからって国内動画の単価を上げたとして、その代わりに原画や演出作監の単価や海外出しの動仕単価を下げるということであれば、結局そっちでも歪みができて新たな問題になってしまいます。
 
今問題になってることって、アニメ業界全体のシステムに起因してのことなので、そろそろ業界全体の在り方を考える時期にきてんじゃないかな。
 
考えるにあたって、具体性が無いとふわふわしただけの机上の空論になりそうなので、ある程度の数字も交えていこうかと思います。
 

作画の実際の予算

 
安い安いと言われるアニメの制作費、アニメーターの単価ですが、実際の予算は大体こんな感じで組まれてます。
スタンダードっぽい金額と枚数で作ってみました。
 

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テレビアニメ1話の作画予算ですね。
元請け会社がグロス会社に発注する際の金額です。
作品内容や予算によって、多少幅はありますが大きく外れてはないかと思います。
監督費・キャラデ・総作監・コンテ・音響・背景美術・撮影・編集等の費用は抜きでの、作画する上での予算です。
監督等は別途全体の予算の上で組まれてます。
 
大体テレビだとカット数は300カット、総枚数はリテイク込みで4500~6000枚ぐらいで組まれることが多いですね。
最近の作品がそれに収まってるかというと、そんなことはあまりなく、超過分は別途計上というパターンが多いかと。
 
これが安いか高いかは別として、実際にこれぐらいの金額をベースとして予算が組まれてるので、一旦はこれで考えていくことにします。
 

作画予算の解説

 
原画とか動画の金額については、この単価通りなので特に解説は必要ないかと思います。
ここでは、制作進行費と管理費について簡単に解説します。
 

制作進行費

 白箱で宮森あおいの職業ですね。

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原画マンや作監の追っかけをしつつ、全体の進捗、カット管理もするその話数の責任者です。
 
テレビアニメ1話あたりの制作期間は理想的なスケジュールでは2ヶ月で考えられてるので、単価×2で計算されます。
激務と言われる(実際激務です)制作進行が月15万というのは安く見えますが、常に他話数ともオーバーラップしながら作品を持つことが常なので、もう少し実際にはもう少し予算は乗る感じですね。
制作期間が少しずつ重なりながら、6ヶ月だと5本担当したりとか。
実際にその分が給料に反映されるかどうかは別ですが。
 

管理費

 
基本的に予算で項目がついて計上されるのは、実際に作業して発生する単価分のみです。
 
しかし実際にはそれ以外にも費用は発生します。
スタジオの家賃、電気光熱費、設定をコピーするコピー費や(結構バカにならない)、 車の維持費等です。
 
当初の予定より枚数が増えた場合、多少であればこの管理費で吸収してくれということもあります。
最近は超過分は別途請求OKな会社が増えてる印象ですが、中にはそうじゃない会社もあります。
 

 作画予算、安過ぎじゃない?

 
いかがですかね?
かなり厳しいと思うんじゃないでしょうか?
 
元請け会社であれば全体予算を握ってるので多少コントロールできますが、グロス主体で受けてる会社だと正直非常に厳しい金額です。
社長や経理(いれば)の給料なんかもここから出す訳ですからね。
 
だからグロス会社は、動画と仕上げ単価を例えば50円とか下げて海外にまとめて発注とかして予算を抑えたりしてる訳です。
50円×4500枚=225000円ですからね。
 
それでもお金がプール出来る訳では一切ないので、常時作品を回す必要があります。
まさに宿命づけられた自転車操業。
 
実際は2ヶ月も制作期間を取れる作品は減ってきてて、1.5ヶ月とかザラなので、期間が圧縮される分多くの作品が回せるようになってるというのはありますが、当然その負担は作品を動かしてる制作進行に乗りかかり、制作進行がどんどん辞めていく一因になってます。
 
最近取り上げられてる動画単価も、このシステムでは上がる見込みはほぼ無いです。
席代を取るとかはまた別の話として。
国内の動画単価を300円にしたところで、その分海外分を下げたりという話にしかならないし、そもそも300円単価じゃ食べていけないのは同じなのであまり変わらないです。
 

でも、本当に無理なの?

 
上記のやり方だとグロスで会社を維持していくのは普通に無理です。
元請けもよっぽど予算の出るキラータイトルを持ってこれないと厳しいでしょう。
 
でも、無理無理文句を言うだけじゃ何も変わらないです。
 
アニメの制作予算自体がすぐに上がる訳では無いですし(国とかがルールを決めて取り締りをしたら別ですが)、仮に予算が上がったところでどうせ末端スタッフへ還元されるとは思えないし、還元されたとしても原画200円とか動画50円上がったところで大した違いは無いです。いや実際それだけ上がったら特に動画とかはかなり生活楽になるとは思いますが根本的な解決ではないです。
 
次回、既存の予算でアニメ業界を回すのは無理かどうか考えてみたいと思います。