ベイマックスを見てきて その2 密度が高い過ぎるせいで感情移入できない?日本のアニメはまだまだ改善の余地がある

今回も引き続きベイマックスの感想です。
 
ベイマックスの密度の高さについては前回書きました。
 
洗練された膨大な量のアイデアと、それを実現させる技術によってベイマックスという作品は出来上がっています。
 
密度が高いということは、フックが多いということです。
 
人によって、作品を見てみようと思う理由や、好きになるポイントはそれぞれ違います。
 
例えば、
 
キャラが可愛い
ストーリーが良い
主人公がカッコイイ
出てくるガジェットが良い
世界観
セクシーorカッコイイキャラ
アクション
 
などなど、いろんな要素があります。
 
さらにストーリー1つとっても、コメディ、恋愛、ミステリー、アクションなどいろんな要素があります。
 
ベイマックスは、それらのいろんな要素を可能な限りぶち込んでます。
 
世界のどこの人が見ても、面白い、好きな要素が何かしらは入ってる。
 
それが遊園地のように、次から次へと退屈することなくどんどん出てくる。
 
だから世界中でヒットできたんだと思います。
 
完全にヒットさせるべく作って、ヒットした例だと思います。
 
要素を詰め込み過ぎたせいで感情移入が出来ない
 
確かに面白かったですが、僕は主人公に感情移入することができませんでした。
 
その理由を考えたところ、ストーリーを詰め込み過ぎたことが原因だと気づきました。
 
この作品は物凄くストーリーも詰め込まれています。
 
いろんな出来事が起こり、それに合わせて主人公の感情も変化します。
 
ほんの2時間の間で、物凄く悲しんだり立ち直ったり楽しんだりします。
 
物語としては、登場人物が物語上の出来事によって変化していくのは基本なので当然なのですが、その変化が短い時間で振れ幅が大きすぎて、感情移入できる間がなくついていけないのです。
 
もちろんストーリー的な破綻はないです。
Aという出来事があり、Bという感情になり、Cという要素があったので、Dの状態になりました。
と、ちゃんと主人公の気持ちの変化の理由は描かれています。
しかも何度も言うように、この密度にして分かりづらいということが一切なく計算しつくされた非常に洗練された描かれ方です。
ただ、映画を見ている僕達の2時間という尺の中では、急過ぎてついていけないというだけです。
 
それと、全てが計算されていて、ツルツルしている感じというのがあります。
洗練されてて、キレイ過ぎるというか。
主人公が天才という設定だからか、詰め込んだ故の尺の問題なのか、いろんな物事を簡単に達成していっているのです。
葛藤というか、人間らしさというかそういうのが感じられないのです。
全てが予定調和に見えるというか。ひっかかりが無いというか。
 

aniram-czech.hatenablog.com

まさにチェコ好きさんの感想と同じような感じです。
 
『アイアンマン』でトニー・スタークが映画の尺の内の大半をかけてアイアンマンを作ったのと似たようなことを、数分の尺でやってるんですよ?
葛藤も何も入る余地がないでしょww
 
だから、感情移入もできなかったし、ラストシーンでカタルシスを感じることも無かったのです。
 
感情移入という点で考えると、宮﨑駿作品はやっぱ良く出来てるんですよね。
 
パズーもナウシカもマルコもアシタカもサツキも、作中通して筋が通ってる。
女の子を助けたいとか、風の谷を救いたいとか、カッコよく生きたいとか。
 
で、そのキャラクターを丁寧に描いて、そのキャラクターがどういう考え方を持ってるか観客がしっかり理解した上で、トラブルが起きて、「頑張れ」的に感情移入できるようになっている。
そしてラストシーンでは、そのキャラの信念が成就する。
だからこそ、そこでカタルシスを得られる。
バルスとか、完全に物語のピークはそこだという作りですもんね。
 
別にどっちが良いとかいう話では無いです。
単にそういう違いがあるというだけの話です。
 
さて、そこで考えたことは、今の日本のアニメはそういう違い以前に世界で戦える水準になっていないということです。
端的に言うと密度が低すぎる。
作画枚数が多いとか、絵を細部まで掻き込んでるとかそういうことではなく、1カット辺りの情報密度。
 
例えば、同じ歩くのでもキャラによって歩き方は違います。
ダラダラ歩くのかシャキシャキ歩くのかとか。
背景や小物も、一つ一つが世界観やキャラクターを表すものなのに、とりあえず記号的なものを配置しておけば良いということになっています。
 
監督・演出・キャラデ・プロップ設定・美監等の数少ないスタッフで、世界観を構築したり物語を展開させているから仕方無いのでしょう。時間も無いです。
関わるスタッフでアイデアを出し合ったり、コンテや演出方法について相談し合ったりということもありません。
でもそれではスカスカの作品になってしまいます。
 
いくら作品のテーマが良くても、それを上手く見せることが出来ないと、上滑りしてしまいます。
 
それでも感情移入が出来て楽しめるのは、日本で日本式の記号化された作品に慣れ親しんでいる人達だけです。
それって、見てる人に対して不親切ですよね。
 
これでは日本のアニメ市場が大きくなることも、お金が入ることも、業界が活性化することもありません。
 
しかし逆に考えると、まだまだ良くする余地が残っているということで、今後日本のアニメのファンを世界中にさらに増やすことも可能だということではないでしょうか。

 

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