アニメ業界を改善するには、もっと全体的なシステムとかから考えた方が良いんじゃないかなと思った話

アニメーター・ふくだのりゆき氏が1人原画の報酬について語る! 「プリキュア」をやってる青山さんの推定年収が凄い!|やらおん!

 
ちょくちょく見てるやらおんでの、ベテランアニメーター・演出家のふくださんのツイートまとめ記事。
 
薄給と言われてるアニメ業界でも、単価のギャラだけで1000万円以上稼げる人もいるんだよという内容。
 
若いアニメーターにはそういう人を目指して欲しいとか言ってる。
 
確かにそれを目指すのは大いに結構だし、むしろ向上心を持つのは必須だと思う。
 
ただ、アニメーターの待遇改善を訴えてるふくださんが言うのは、お前は何を言っとるんだ?ということにしかならない。
 
これって、結局沢山描いたから沢山お金もらえたよ、ってだけの話でしょ。
 
んで、これだけ「沢山」描ける人は超少数です。
 
例えにイチローを出してたけど、みんながイチローになれる訳が無い。
 
アニメーターに限らずだけど、業界の労働環境は確かに悪いし改善する必要はあると思う。
 
でもその方法に、毎月1人原画・作監なんていう離れ業を挙げるのは明らかにおかしい。
 
確かに、現在はほとんどのアニメーターが複数作品を掛け持ちしたりで効率が悪くなってる部分が多々ある。
 
それを一作品に集中させられる環境を作れば、アニメーターや演出の効率が上がり描けるカット数も増えて、収入も上がるよっていうところで止めておくべきだった。
 
青山さんは確かに凄いし、レジェンドと言っても良いレベルだとは思うけど、プリキュアだからできてるっていう部分が絶対ある。
 
最近の作品だと進撃の巨人とかサイコパスとかの線が多い作品で1人原画が出来るかっていうと無理でしょ。
 
1人原画だとどうしても荒くなってしまう部分はある。青山さん回の話数見てもそう感じる部分はあるよ。
絵自体が荒かったり、レイアウトが弱いカットもあったりする。
 
進撃じゃなくても、最近の作品はそういう緩さが許されなくなってきてる。
 
だからみんな原画で描けて月50カットとかっていう話が出てる訳で。
 
あんまり現実的な目標にはなり難い例じゃないですかね。
 
さらに決定的なことを見落としてると思うのですが、仮に全部のアニメーターが1人原画をできるようになったら確実に単価は下がるよ。
これに関しては、100%断言できる。
 
だって、ギャラが半分になっても500万円だからね。十分生活できる金額だし、一般社会の30代~40代のサラリーマンと比べてもほぼ遜色ない額ではないでしょうか。
それで、大半のアニメーターが1人原画をできる実力を持ってるという状況になったら、その実力に対する価値って減るよね。
他に代わりがいっぱいいるってことなんだから。
これだけの条件が揃ってたら、僕が金を出す側なら確実に単価を下げるね。
1カット2000円~3000円ぐらい?
それで食えないのはそいつに腕がないからだ、他はみんなそれで500万円稼いでるじゃないかって言えるもんね。
 
さらにもう1つの理由。
必要とされるアニメーター数が減るよね。
現状テレビシリーズ1話辺りで15~30人ぐらいの原画マンが入ってるけど、1人で済んじゃうってことでしょ。
食いっぱぐれるアニメーターがギャラ安くてもいいんで少しでも仕事をくれってダンピング合戦開始だよ。
 
だから一部の天才的な才能や技術を持ってる人を例にして、それを目指せっていうのは間違いだと思う訳です。
技術者が目標にするのは当然良いけど、産業として一部の天才的な人の能力を一般化しようとして構造に組み込もうとするのは方針として間違ってる。
 
さらにキツイことを言うと、青山さん回レベルの作画で例えばサイコパスを作ると、サイコパスの商品価値が無くなるよ。
青山さんならもちろんIGレベルのサイコパスは描けるだろうけど、さすがに作画スピードは落ちるでしょう。
 
仕事のギャラは商品の市場価値で決まる。
 
そういう意味ではサイコパス(もちろん他の作品も。例としてサイコパスを挙げてるだけですよ)は、あれだけのクオリティを出してようやく原画マンに出せる単価が4000円分にしかならない価値しか市場に提供できなかったってことです。
実際は制作費は先に決まるから、市場への価値(要は作品の売り上げ)とは順番が逆だけど。
でもそれだけの価値しか作品全体で生める目処が無かったってことでしょ。
実際サイコパスは4200円か4500円だっけかな。まあ今は細かいことはいいや。
 
大事なのは、東映はTVシリーズではクオリティでは勝負しなくても戦える土俵を作ったってこと。
プリキュアだってトリコだって、ワンピースだって作画の平均クオリティで言えば、他のスタジオの方が全然良い。
でも作画以外の価値を提供できてる。
プリキュアだとそもそものコンセプトが、小さい女の子に向けて、登場人物がバトルする作品ていうところで価値を作ってる。
もちろんバトルだけじゃなくて、ストーリーだったり演出だったりも。
作画だって見せ場では、バシッと決めてくる。
EDでは3Dを使って新しいことにも挑戦してる。
作品単体でもしっかりとマネージメントできているし(厳しい枚数制限もそうでしょ)、長い歴史の中で少年向けアニメ・少女向けアニメっていう自分のフィールドを確立してる。
版権も持ってる。
戦略やマネージメント等、産業体として、他のアニメ会社とはレベルが違う。
 
とりあえず僕が言いたいのは、1000万円稼げるアニメーターを目指させるのではなく、もっと業界全体のシステム的なところを考えるべきなのではないかということ。
 
具体的には、もっとアニメの価値を高める方向。
安易に萌えアニメばっかり作ってれば、結局はアニメがそういうものとしてしか見られなくなって一般的な価値はどんどん下がっていくよ。
 
その結果、どうなるかというと、日本のアニメ産業は衰退するしかないだろうね。
 
そんな中で、マッドハウスというか日テレは大したものだと思う。
 
huluで寄生獣をテレビとほぼ同時?一週遅れ?で見られるようにしてるし、そもそも持ってるコンテンツが萌えアニメとか見ない人にも訴求できるものばかり。
カイジとかちはやふるとか。
円盤は売れなかったかもしれないけど、誰でも見られるプラットフォームが増えた現在では、一般の人も楽しめる作品の価値が高まって来たんじゃないでしょうかね。
 
こういうところからアニメのファンが増えれば良いね。