【アニメ業界改善案】好きなアニメを見続ける為に。まずは「日本のアニメ業界の継続的な存続と発展」を目的と定義

庵野監督のインタビュー記事が話題になってます。

 

jp.sputniknews.com

あと5年かどうかは分からないけど、制作システムがかろうじてもってる状態というのには同意です。
 
労働環境の悪さや給料の低さなど、決して待遇が良いとは言えない業界です。
それでも新しく人が入ってきてたのは、生活が大変でもアニメを作りたいという熱意がある人が多かったんでしょう。
 
20年前でもすでにバブルは弾けて不況と言われていたと思いますが、それでもバブルの残滓は残っていただろうし、いざとなれば田舎に帰ればなんとかなるという意識もあったと思います。
 
ただ、今は時代が変わってきてる。
今からアニメ業界に入ってくる人の親世代は、いつリストラに合うか、リストラどころか会社が潰れてしまう可能性すらある時代です。
 
つまり親に頼ることができない。
となると、食っていけるようになるかどうかも分からない、食ってはいけても待遇の悪さには定評のあるアニメ業界。
まともな人間であれば、アニメ業界に入ることなんか選ばないでしょう。
 
そうすると、今のままでは人材不足に陥るのは確実で、日本のアニメ業界はどんどん衰退していくと思います。
 
庵野監督もインタビューで言ってるように、アニメ制作が海外にシフトしていくという流れもあるでしょう。
 

日本のアニメ業界の問題は誰の問題?

 
というところで、僕が気になるのは、庵野監督の上記のような予想があって、危機感を煽るような記事になってるけども、それって実際問題なの?ってことです。
 
別にどこの国でアニメを作ろうが面白ければいいんじゃない?
今だって海外スタッフがメインで作られているアニメは沢山あります。
監督とかのヘッドワークスは日本人でも、原画や処理演出レベルは海外というものは多いです。
 
アニメ業界の待遇の悪さは、ちょくちょく話題になりますが、「年収110万円!?」とか単にセンセーショナルっぽい見出しで煽ってるだけという気もします。
 

もう10年くらい昔、動画単価が今のままでは新人が育たないと思い。 個人的に、さいたま市の関東経済局に「アニメ業界に対して行政指導してもらえないか」と頼みに行った事がある。 当時、動画単価は1枚200〜230円くらいだったが、その金額は今も変わっていない。

— ヤマサキオサム (@LeeYamakun) 2015, 5月 1

 

その時、袋貼りやネジ詰めの内職が1個1円とか5円だったとして、それが安いかどうかはその金額で仕事を受ける人が居るかどうかで判断される。 受ける人が居るということは適正で、安ければ受けないでしょうと言われた。 まともに考えればそうなのだが…そうなっていないのがアニメ業界なのだ。

— ヤマサキオサム (@LeeYamakun) 2015, 5月 1

 

上記の経済局の人の言う通り、安い単価が嫌なら仕事を受けなければいいし、そもそもアニメ業界に入ってこなければいい。
 
アニメが作りたいんだったら今の時代個人でいくらでも趣味で作ることができます。
1人じゃなくても、何人かのサークルとかね。
 
それでもアニメ業界で働き続けてる人がいるってことは、それだけの理由があるってことでしょう。
 
外野がやんややんやと騒いだところで、中の人が気にしてないんだから変わるはずが無い。
 
これらの一連の議論での大きな問題点は、誰がどういった状態になるのがゴールなのかという、主語と目標を定義せずに話を進めているところじゃないでしょうか。
 
例えば新人の年収が110万ということが、周囲が「安すぎる」「問題だ」と騒いだところで、本人たちは「技術が無いんだから当然」とか思ってたりする訳です。
それで生活できない人が辞めていくけども、それって騒いでる人達には関係ないことですよね?
 
そうなってくると、年収110万円とかっていうのは誰にとっての問題なのかって話です。
 
給料が低いのが問題、若者を使い捨てにしてるのが問題、業界が数年後に崩壊すると言ったところで、農業なんかと違って、アニメという無くても生きていけるものを作ってる業界なんだから、「そんなに問題があるなら入らなければいいし、入っても辞めればいいじゃん?」ということにしかならないでしょう。
 
日本のアニメ業界が崩壊したら、もちろんアニメ業界関係者は困るかも知れないけれど、普通にアニメを見てるだけのファンたちは、制作が海外にシフトして作品が作られるならそれでも良いって思うんじゃないかな。
 

日本のアニメ業界の問題は、僕ら日本のアニメが好きな全ての人の問題

 
今、日本のアニメ業界の問題を論じてる人って多分大事なことを書いてない。
というか僕もこれまで書いてなかった。
 
多分あまりにも当たり前過ぎて、それを前提とするのを忘れていた。
 
それって何かって言うと、
 
日本のアニメが好きってこと。
 
アニメなんか世界中で作られている。
 
むしろ世界的にみたら、ディズニーやピクサーの方が市場規模的にも評価的にも日本のアニメより上。
 
でも、そんなの関係ない。
 
僕らは「日本の」アニメが好きなんだよ。
 
中国でそれが作れるならそれでもいい。でも無理でしょ?
ディズニーピクサーでも無理。
 
今後も毎クール新作が増えていって欲しい。
 
願わくばその中に鳥肌が立つほど面白いと思える作品があって欲しい。
 
その為には、日本のアニメ業界が存続していなけばいけない。
 
存続する為には、新しく人が入ってきたいと思うような、そして入った人が辞めない健全な業界である必要があるということ。
 
多分、中には利害の問題で日本のアニメ業界を論じてる人もいるでしょう。
でもそういう人も目的は同じ。
 
日本のアニメ業界の継続的な存続と発展
 
これが一連の議論の根幹であり、目的とするところじゃないでしょうか。
 
自明のことではあったかも知れないけれど、あえて改めて示すことに意味があると思い今回のエントリを書きました。
 

アニメ業界の目的は一般的な企業の目的とも合致

 
ところで「企業」「目的」等のワードでググると以下のページが上位に表示されます。
ざっくりとまとめると、企業の目的は、社会に価値を提供することで、その為にも継続して存続・発展することが重要ということ。
利益はこれらを達成する為の条件に過ぎないということです。
 
アニメ業界も、一般的な企業も、目的とするところは同じということです。
 
ということは、アニメ業界を1つの企業として考えることで、よりはっきりとアニメ業界の問題点が見えてくる気がします。
 
という訳で次回からは、「日本のアニメ業界の継続的な存続と発展」を目的として据えて、考えたことをつらつらと書いていこうと思います。 
新訳 現代の経営〈上〉 (ドラッカー選書)

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